TVision

活用事例

株式会社LIXIL

これまでの経験則を定量データ化。
得られたデータを独自の手法でフル活用しています。

課題

テレビ番組やテレビCMが、ほんとうに視聴率と同じボリュームで見られているのかわかりませんでした。

導入の決め手
  • 画面の前にほんとうに人がいて、直視していることが秒単位のログデータでわかるところが魅力的でした。
  • 認知に対するリフト効果が期待できるという仮説が構築できました。
導入後の効果
  • テレビCMを通じて、視聴者がどの商品の、どの機能に興味を持ったかを把握できるようになりました。
  •  プランニング、バイイングの際、実際にどれぐらい見られるのかを割り出し、コスト効率を見られるようになりました。
  • クリエイティブからわかったデータを、プランニングや商品企画にも活用しています。

住宅建材・設備機器メーカー最大手のLIXILは、2011年4月に住生活グループの事業会社5社が経営統合して出発した。同社は2016年以降、テレビCMを含め、広告出稿を積極的に行っている。商材やサービスに対する消費者の興味・関心が低いという課題に対して、いかにTVISION INSIGHTS(以下TVision)のデータを活用したのか。広告戦略を担当する長島純氏に話を聞いた。

株式会社LIXIL マーケティング本部 マーケティングストラテジー統括部 宣伝部 コミュニケーション企画 制作グループ グループリーダー 長島純(ながしま じゅん)さま

 

 

エンドユーザーコミュニケーション強化により、積極的にテレビCMも展開

私たちが扱っている商材の中にはトイレ、浴室、キッチンといった水回り商材があります。いずれも日常生活の中で改めて意識することの少ない、あって当たり前、いわば「空気のような」存在です。クルマや家電、インテリアなどの他カテゴリー商材に比べ、ユーザーの興味・関心が低いという課題を抱えています。

そのような課題がある中、どのようにエンドユーザーコミュニケーションを強化、推進していくか、どのようなアプローチが効果的であるかを、私たちは日々検討しています。2016年8月にスタートした『キリギリスとアリ』シリーズは、まさにその課題と向き合う中で生まれた一つの答えでした。このテレビCMは、「商品カタログや取扱説明書をエンタメ化しよう」というコンセプトのもと、俳優の山下智久さん、ピエール瀧さんを起用し、ストーリー仕立てで当社のトイレの存在と機能を伝えるものでした。これを皮切りに、キッチンや浴室のシリーズにもお二人を起用させていただき、テレビCMを展開しています。

タレントを起用した理由の一つは、当たり前ではありますが、広告へのアテンションを高めるためです。当社の商品は、日々の生活の中で常に使用されてはいるものの興味・関心という点においては、圧倒的に意識が低く、広告に対する関心も他業界と比べ相対的に低い傾向があります。そのため、いかに広告に目を向けてもらうか、という課題に対して、他業界の広告以上にさまざまな工夫が必要だと感じています。だからこそ、当社の広告に目を向けてくれたユーザーの興味を裏切らない流れ・ストーリーのまま、どんな機能があり、何ができるのかを印象的に伝えることにもこだわりました。また、送り手はつい多くのことを伝えたくなりますが、1クリエイティブにつき訴求するのは1機能と決め、全5パターンを制作。キッチンや浴室のテレビCMでも、1機能ごとにクリエイティブを変えるやり方を続けています。

ターゲットは対象商材やマーケティング戦略ごとに設定していますが、テレビCMのメインターゲットは、デモグラフィックデータでいうとMF3層やMF2層が中心になることが多いです。

リフォームの実需、つまり実際に家のリフォームを検討・実施する層はMF3層の割合が大きいんです。とはいえこの層はテレビの視聴時間が長く、ある程度のボリューム(GRP)を投下すれば、十分なリーチを確保でき、認知も伸びやすい層といえます。

そうなると次に届けたい層は、リフォームの実需ターゲットの子ども世代であり、かつ、持ち家一次取得者(住宅を初めて購入する人)であるMF2層です。MF2層は仕事や育児で忙しく、メディア接触がもっとも低い層です。それはすなわち、テレビでもデジタルでも接点を創出しづらい層といえます。そのため、テレビCMを実施する際も、MF2層に対するリーチ効率を意識したプランニングを行うことが多くなっています。

 


ほんとうに見られているか未知数のテレビというメディア

視聴率という指標については、正直、今後もこれまでと同様の評価軸として活用してほんとうに問題がないのかと漠然と考えていました。

テレビ番組は果たして視聴率と同じだけのボリュームで見られているのか。たとえば、朝の番組を時計代わりや天気予報のチェックのためだけにつけている方もいるでしょうし、夜の番組をスマホ片手にSNSを見ながら視聴されている方も増えてきていると思います。特にスマホとの「ながら視聴」が一般化していく中で、実際に番組内のコンテンツやテレビCMが視聴率の数字のとおり見られているかは未知数です。

デジタルマーケティングが進化して、今までよりも多くのことが細かく分析できるようになりました。そのことも、ほんとうに視聴率だけでテレビの効果を評価してよいのかと考えるようになった理由の一つです。現状、視聴率は分単位のデータしかありません。たとえば、テレビCMの放映中にウェブサイトへのアクセスが伸びたとします。もちろんこれまでも、視聴率をもとに、「これはきっと、テレビが要因だよね」と、ある程度相関を把握することはできました。それをさらに、秒単位というメッシュのログデータと重ねることができれば、今まで以上に高い精度で効果を判断できますし、今まで見えていなかった効果も見えてくる可能性があると思います。

その点、TVisionのソリューションは、人がほんとうに画面の前にいて、直視していること、つまり視聴の「質」がデータとしてわかる点が、いちばんの魅力でした。今まで「きっと」「たぶん」と推測してきたことが、人体認識アルゴリズムによって「誰でも・確実に」わかる明確な数値になっています。こうしたログデータを、秒単位というメッシュの細かさで持っていることに、ひかれました。


2カ月間のトライアルで、認知のリフト効果をシミュレーション

TVisionのデータを導入する前に、コストパフォーマンスを検証するため、2017年1月から2カ月間トライアルすることに。そこでまず、2016年8月から放映した『キリギリスとアリ』シリーズと、2016年10月から開始した『リクシルPATTOリフォーム』シリーズの視聴質の検証を行いました。具体的には、各局の番組枠をつぶさにチェックし、「この枠はVI値(Viewability Index=滞在度)が高いのに出稿していない」「この枠よりも、この枠を買えばこれぐらい効率が向上するのでは」といった、細かいシミュレーションを担当者が手作業で行っていきました。同業他社や、ターゲットが類似する企業のテレビCMの視聴傾向を見ることができたのも、とても参考になりました。

結果、VI値やAI値(Attention Index=注視度)をもとにプランニングすることで、認知に対するリフト効果が期待できるという仮説を構築することができました。そこで2017年4月から導入を決め、今ではすべてのテレビCMをVI値、AI値をもとに評価し、実際の認知との相関やリフト効果の検証を行い始めています。

TVisionのデータは、クリエイティブにも活用できる可能性を感じていますが、現状、結果が出てきているのは、プランニング、バイイングのほうです。特にタイム枠を検討・購入する際は、非常に助かっています。番組を検討する際、想定視聴率にVI値とAI値を掛け合わせることで、実際にどれぐらい見られる可能性があるのかを割り出し、コスト効率を見るようにしています。

得られたデータをプランニングや商品企画にも活用

クリエイティブへの活用はこれからですが、データに基づいた改善は始まっています。

これまで「宣伝担当者やクリエイターの経験則」だったこと、たとえば重要なシーンに音楽のサビの部分をぶつける、タレントのアップを入れたほうがいい、画面は明るいほうがいいなど制作の現場で長年重要視されてきたことが、TVisionのデータでも高いAI値として現れてきました。キッチンのテレビCMである『BISTRO LIXIL』シリーズではそれをもとに、意識的にタレントのアップを増やしています。浴室のテレビCMである『非日常行きのバス』シリーズでは、水流を見せるため黒を基調としながらも、暗く沈まないよう工夫し、明るさを担保するなど、少しずつクリエイティブに生かしています。

クリエイティブを見てわかったデータは、プランニングや他部署との情報共有にも活用されています。たとえば『非日常行きのバス』シリーズでは、6月にOAした3つのCMタイプの中で、最もAI値が高かったタイプを次のタイミングで重点的に放映することにしました。また、キッチンの『BISTRO LIXIL』シリーズでは、サブ的な機能を訴求したタイプのテレビCMが、もっとも高いAI値を獲得しており、その結果を商品企画にもフィードバックしています。このように、さまざまな新しい試みに取り組んでいます。

どの瞬間、どの層に見られているかがこれほどまでわかることが、TVisionのデータの最大の魅力です。こうしたデータが出てくると、テレビCMを通じて、視聴者が当社の商品のどの機能に興味を持ったかを把握することができます。しかも視聴者が無意識のうちに取っている行動(視聴姿勢)に基づいた秒単位のログデータとして分かることは、大きな価値だと思います。

いくつかのCMのAI値(注視度)を比較するグラフと、CM毎の毎秒AI値を示すグラフ。見たいCMのAI値をダッシュボードで分かりやすく表示している。

 

表現の幅を広げ、クリエイターをサポートするデータ

今は、データからわかってきたことを一つ一つ試しながら、効果を把握しているところです。引き続き試行錯誤を繰り返しながら、もっと大きなインパクトを起こせるよう、チャレンジしていきたいと思います。

TVisionの「視聴質」データは、宣伝担当者やクリエイターを後押ししてくれる新しいデータでもあると思っています。もっと思いきった表現に振り切るため、もっと新しい表現を開発するためなど、やりたいことの裏付けをとるサポートデータにもなると思うのです。

データばかり見ていたら、宣伝担当者やクリエイターがやりづらくなるのではと考える人もいるでしょう。しかし私はそうは思いません。なぜなら、AI値が高くなるノウハウばかり積みあげて、AI値が高いテレビCMを制作したとしても、届けたいメッセージが視聴者に届けられていなければ広告としては大失敗と評価されます。メッセージを届けるという本質的な目的が変わらない以上、そこには今までどおり、宣伝担当者の意志入れが必要であり、クリエイターの方々が持つクリエイティビティが不可欠なのです。でも、これからはデータにも真摯に向き合えば、きっと新しい発見があり、それがクリエイティビティに刺激を与えることもあると思います。だから、すべてはどうとらえて、どう生かすか次第。理想とするクリエイティブを追求するためのデータだと考えれば、これほどいいものはないと考えています。

TVisionには、もっとパネル数とデータ取得対象地域を増やしてほしいですね。今は首都圏だけなので、東名阪、できれば7地区まで拡大してもらいたい。スマートテレビとのデータ連携、デジタルとの連携も進むといいですね。