TVision

2018/5/25

アドタイ・デイズ2018 登壇レポートを公開いたしました

コンテクストを共有し、世間のムードを醸成するビジネスパートナーを目指して

アドタイ・デイズ2018
「TVISION INSIGHTS視聴質データから見る、
広告主と放送局の新たなパートナーシップの可能性」

 

4月12日、東京国際フォーラムにて宣伝会議主催の「アドタイ・デイズ2018」が開催され、TVISION INSIGHTS(以下TVISION)は、日本コカ・コーラの今西周氏、テレビ朝日の松瀬俊一郎氏をお迎えしてセッションを行いました。お二方が取り組んできた最新のマーケティング事例をTVISIONの視聴質データで検証しながら、これからの広告主と放送局の関係性についてディスカッションを交わしました。

 

コンテンツの文脈や消費者のムードに寄り添うコンテクストマーケティング

左:TVISION INSIGHTS 郡谷康士 中央:日本コカ・コーラ 今西 周氏  右:テレビ朝日 松瀬俊一郎氏

郡谷:本日はお忙しい中お越しいただき、誠にありがとうございます。本日は広告主と放送局の新たなパートナーシップということで、広告主の代表として日本コカ・コーラの今西さん、放送局の代表としてテレビ朝日の松瀬さんをお迎えして、お送りしたいと思います。

今西さん、松瀬さんどうぞよろしくお願いいたします。

今西・松瀬:よろしくお願いします。

郡谷:ではまず、自己紹介をお願いいたします。

今西:日本コカ・コーラの今西と申します。私たちのセクションが担っているのは、あらゆるメディアにおけるコンタクトポイントをプランし、バイイングすることです。これを我々はメディアプランニングと呼ばずに、「コネクションプランニング」と呼んでいます。今日は、特にこのコネクションプランニングの考え方、それに基づく放送局とのパートナーシップについて、お話していきたいなと思っています。

松瀬:テレビ朝日の松瀬でございます。入社して約20年、マーケティングや番組プロデュース、編成を手がけた後、昨年夏に営業へ異動してまいりました。今日は広告媒体としてのテレビについてももちろんですが、作り手の立場、クリエイティブの面からの視点も出せると面白いかなと思っています。

郡谷:まず今西さんにお聞きしたいのですが、コカ・コーラ社 さんといえばコンテクストをうまく活用したマーケティングに数多く取り組んでいらっしゃるように思います。その中で、どのようなお考えでコンテクストマーケティングを行っているのか、テレビという媒体はどのような位置づけなのかお聞かせ願えますでしょうか。

今西:私たちが製品情報やブランドメッセージ、広告を届けていくなかで、それらがちゃんと見てもらえなかったり、聞き流されたりしては、効果につながらないですよね。

つまりターゲットに当たった時の質が重要なのですが、質を上げるためには、消費者に能動的にコンテンツを見てもらい、コンテンツの文脈や番組の中でたどり着いた世の中のムードにまで寄り添う必要があります。消費者にとってちょうどいいタイミングで、ちょうどいい言い方でブランドメッセージを届ける。そうすることで共感性が生まれ、一つのインパクトにつながるんじゃないか。そう仮定して、試行錯誤しながらコンテクストマーケティングを行っています。

テレビというメディアは、私たちの製品の性質上、巨大なリーチメディアとして非常に重要です。さらにコンテクストに寄り添い、視聴者とつながって広告を見せられるメディアとしても大切だと思っています。

郡谷:その取り組みの一つとして、夏の甲子園の時に放映されている番組『熱闘甲子園』の事例を共有いただけますでしょうか。

■2016年「熱闘甲子園」での取組

今西:我々はテレビ朝日さん、及び朝日放送さんと長年、『熱闘甲子園』という番組を一緒にやらせていただいています。制作側の意図やテーマを理解し、リスペクトして提供させていただいています。

これはリオ2016オリンピック の時、夏のキャンペーンとして実施した広告企画の一つです。「ゴールドボトル」と呼ばれるキャンペーン用の「コカ・コーラ」ボトル を作り、「世界で一番のライバル」、「世界で一番のパートナー」といった、スポーツにおける輝かしい場面を約100通りのメッセージとしてボトルに印字し、発売 しました。

『熱闘甲子園』という番組自体は、その日の試合で生まれたドラマをストーリーに乗せて伝えていくドキュメンタリーです。番組の中で展開させていただいたのは、実際販売しているボトルとは別に、その日のテーマ ――この時でいえば「世界で一番の先輩後輩」ですね―― テーマとなる言葉をプリントしたボトルを独自に作り、番組の最後にその言葉と共に製品を紹介してもらうという形でした。番組の流れや文脈に寄り添い、見ている消費者の気持ちにも近づきたい考え、作った企画です。

郡谷:この企画の視聴質データを見てみたところ、こういう形になりました。

 

■その結果は・・・?

郡谷:横軸は各時間に流れていたシーンで、縦軸はTVISIONが取っている視聴質、AI値(注視度)という実際にテレビ画面を注目していた度合いです。テレビ番組の場合、最初は盛り上がっても、CMやエンディングに向けて徐々に数値が下がっていく傾向にあるのですが、この広告企画の仕掛けが入っている「エンディング2」というパートでは、番組終了間際にもかかわらず、本編並みのアテンションを記録しました。データからも、質のいいキャンペーンだったことが見て取れます。

今西:こういうデータは、初めて見ましたね。これは放送局サイドや広告会社さんのご協力があって成立した企画でした。2016年の夏頃からコンテクストやコンテンツ、文脈に沿ってメッセージを伝えていきたい、そしてそれをよりリアルタイムにできないかという話が出てきました。

松瀬:こうしたデータは今までなかったのですが、本当に見られたかどうかの効果の部分がこうしてデータとして出てきて、証明されると非常にわかりやすいなと思います。

“乾杯CM”は約70%高いアテンションを記録し、態度変容を促した
郡谷:次に、つい最近の効果が出た事例をお話いただけますでしょうか。

今西:ご存知いただいている方も多いと思うのですが、2月の平昌2018オリンピック のキャンペーンで実施させていただいたテレビCMについてです。この時は各放送局さんとお話をしながら、競技の勝敗がついた時に試合の結果に応じたCMを放映させていただくという施策をやらせていただきました。特に金メダルを獲った試合では、盛り上がっている最中に、綾瀬はるかさんが「コカ・コーラで乾杯!」と祝福するテレビCMを放映させていただきました。

するとCMが流れた瞬間からものすごいスピードで「今のCM、見た?」「コカ・コーラで乾杯したくなった」「飲みたくなった」「なんかいいね、こういうの」という消費者の驚きの声が、Twitter上に溢れました。これはまさしく質の部分です。消費者がコカ・コーラというブランドを好意的に思ったり、製品を飲みたくなったという、我々が一番求めている態度変容、すなわち広告効果までしっかり見ることができた大きな事例でした。

■その効果の高さを、視聴質で確認

郡谷:ちなみにこのCMは、何パターンぐらい用意されたんですか?

今西:まあそれはちょっと……企業秘密です(笑)。これは発想の問題かなと思っていて、極論ですがテレビに映っているものすべてが楽しければ、視聴者も「CMだからトイレに行こう」という発想はなくなりますよね。今回、放送局さんとも同じ目的意識でチャレンジし、実現できたことはすごく大きかったと思います。

郡谷:実はこのCMは、この番組中に流れたCMの平均に対して、70%近く高いアテンションを集め、かなり専念度合いの高いキャンペーンとなりました。

 

マス、リアル、デジタルをパッケージ化できる放送局のコンテンツ力

郡谷:次に松瀬さんにお伺いさせていただきます。コカ・コーラ社さん のみならず様々な広告主さんから多岐にわたるニーズが出てきていると思うのですが、テレビ朝日さんではどのように応えて、どのようにチャレンジしてきたのでしょうか。

松瀬:テレビのベースというのは、より多くの人に、同時に、メッセージや商品、企業を発信できることだと思います。ところがこの10年ぐらい、それだけではなかなか全てをカバーしきれなくなってきたと実感しています。CMプラスαの、この「α」の部分をいかに広げて広告主のみなさまにお応えするかということが重要で、それを様々な力を借りてやっているところです。

今一番ホットなのは、FIFA ワールドカップ のトロフィーツアーです。コカ・コーラ社さん がやっていらっしゃる企画で、まさに今月末、トロフィーの実物が日本にくるんです。

今西:そうですね、はい。

松瀬:この取り組みを盛り上げようと、テレビで取り上げたりイベントを行ったり、それをパブリシティにしたりということをやらせていただいています。つい先日まで、どこにトロフィーを呼ぶのかを決める投票をやっていました。最終的に約50万票集まりまして、サッカーの盛んな静岡市清水区に決まりました。

今西:ちょうど4月9日から、「ナンバーボトル」というFIFAワールドカップ 仕様の「コカ・コーラ」 を発売させていただき、キャンペーンがスタートしたところです。これは単純に広告を露出したり、CMを流すということではなく、消費者向けのプロモーションであり、消費者体験です。一方通行ではなく、複数のコンタクトポイントで消費者に広告メッセージを伝えることをご理解いただき、協働していただいています。

郡谷:マーケティングパートナーという感じですね。

松瀬:そうですね、こうした試みはロンドンオリンピックからです。

今西:そうですね。

松瀬:一方で、テレビのCM自体もちゃんと盛り上げなきゃいけないということで、次の事例をご紹介したいと思います。CMの注目を上げるため、プラスα何かできないかという新しい取り組みを行いました。

昨年行われたFIFAワールドカップ のオーストラリア戦で、試合終了直後に生CMを放映したんです。FIFAワールドカップ への進出が決まる試合だったので、勝ち・負け両方のパターンをリハーサルして、勝ったら「日本、おめでとう!」と祝福する番組や試合状況と連動したCMを流しました。

今西:これ、見ましたよ。

松瀬:ありがとうございます。

郡谷:アテンションが高かったんですよね。

松瀬:AI値(注視度)は、1.42でした。

郡谷:このCMはノーム値(番組全体で流れたCMの平均値)に対して+75%という非常に高い数値で試合本編とも変わらない数値が出たCMでした。

松瀬:ハーフタイム中も、LINEさんと組んで、Clova(クローバー)WAVEのCMを流しました。声をかけると答えてくれるAIアシスタント搭載のスピーカーなんですが、これも十数パターン作りました。「今、何対何? 試合どう?」と聞くと「1対1」と(Clovaが)言う。それを実際の試合状況に対応させました。放映後、「これ、どうやって作っているの?」と憶測合戦になりました。

 

数社限定でアプローチした『君の名は。』連動CM

郡谷:お正月には、映画『君の名は。』の地上波初放送もありましたよね。

松瀬:これは最初から、番組内容とコラボレーションしたいスポンサーさんを数限定でセールスし始めました。すでに新海誠さんの世界とコラボレーションしていたZ会さんや、「君の名は……」と言い出し「入れ替わってる!?」と言う犬のCMを放映したソフトバンクさんがそれに当たります。

郡谷:恐らくプレミアムセールスというような形で、通常よりかなりコストもかかったはずですが、その分効果も出たのではないですか?

松瀬:かなり注目を得たようです。

■「君の名は。」の連動型CMはその前後の本篇やCMと比較してAI値はどうだったか?

郡谷:こういう時は、効果が出そうな取り組みだとある程度予測できますよね。その時こういうデータがあると、検討しやすくなるものでしょうか。

今西:広告の場合、効果こそが価値だし、その価値が数字で証明され、計算できるのなら、価値に応じたメディア投資を行うべきだと思っています。リターンが返ってくれば、僕らはそれを手にするので全く問題ありません。

既存の視聴率だけではなく、測り方の工夫や視聴質などの新しい指標によって、テレビ広告の価値と効果が明確になれば本当の値付けができるでしょうし、投資にもより前向きになれますね。

 

セールスからビジネスパートナーへと進化し、対話を深めたい

郡谷:今後、広告主とメディアの関係はどのように進化していくと思いますか。

今西:より対等でフラットなビジネスパートナーという関係値になっていかなければならないと思っています。これこそ我々が取り組まなきゃいけない領域なのかなと。

すでにデジタルメディアではそうなっていて、多岐にわたる広告のプラットフォームやメニューをどう扱えばいいのか、ビジネスパートナーとしてフィードバックしてくれるし、しっかり効果測定して、コンサルテーションしてくれる。

テレビの場合、デジタルメディア以上の長い関係値があるのに、そこがまだまだ十分ではない。より踏み込んで、放送局さんには広告主の私たちに足りないものをビジネスパートナーとしてしっかり教えてほしい。広告主側も、どうしたらテレビが、広告も含めて「映るすべてが楽しいメディア」になれるのかを、もっと直接対話する必要があります。これを営業だけでなく、番組制作や編成の方々とも煮つめていけたら、大きな進歩だなと思います。

松瀬:パートナーと仰っていただけて、すごく嬉しいですし、ありがたいです。やっぱり、テレビの営業マンって変わらなきゃいけないんですよね。タイムセールス、スポットセールスだけやっていては、「視聴率これだけ獲れますよ、よろしくお願いします」に終始してしまいます。これでは、パートナーになりえないですよね。

我々が目指しているのは、ワンストップのプランナーです。放送局の営業に相談してもらえたら、一番大きい媒体であるテレビはもちろん、デジタルもリアルイベントもやりますし、そこからパブリシティにもつなげます、そしてバズらせます――そういうすべてのコーディネート、100%のパッケージができるのは、テレビだけだと思うんですね。

放送局ならではの部分でいうと、クリエイティブ面ですね。作り手としての、放送局員。実はテレビ朝日の営業マンって、番組を作りたくて入っているケースが多いんですよ。「テレビでこういうことをすると、面白いよね」がわかっている人たちが作るからこそ、本編からCMへするっと入れる親和性まで加味できるんじゃないかと思っています。

郡谷:まさにコネクションプランニングであり、それに応えるワンストップであるわけですね。枠を売るだけの関係ではなく、一歩進んだトータルマーケティングプランナーであるということが、新しいパートナーシップだということですね。

まだまだ話足りないですが、お時間になりましたので、本日はここで終わりにしたいと思います。素敵なお話、ありがとうございました。

※文中敬称略

 

ご登壇者お名前
今西 周(いまにし・しゅう)氏
日本コカ・コーラ株式会社
マーケティング本部
IMC コネクションプランニング&メディア
統括部長

松瀬 俊一郎(まつせ・しゅんいちろう)氏
株式会社テレビ朝日
営業局 営業部 統括担当部長